2008年 08月 15日
「火の粉」雫井脩介(幻冬舎)
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裁判官の梶間勲は、自らの最後の審判となる一家3人殺害事件の被告に、証拠不十分として無罪を言い渡す。
退官後、大学の教員となった勲は、郊外の家で、妻と自分の母親、息子夫婦と同居していた。
ある日、隣りの家に、偶然にもあの裁判の被告・武内が引っ越してきた。
妻に親切にしたり、勲の母親の介護を手伝ったり、なにかと梶間家と関わりを持ち始めた武内に、ひとり息子嫁の雪見だけが不審感をもつ。
老親の介護で大変ながらもうまくまわっていた梶間家だが、武内が隣りに来てから家族の中に不穏な空気が流れ始める…。
映画「隣人は静かに笑う」をチラッと思い出しました。
恐いですね。
武内は見るからに気味悪く怪しいのですが、勲の妻・尋恵は親切な武内にどんどん気を許していきます。夫が判決を下した事件で無罪となったわけですから、夫を信じるし、そういう過去のため偏見を受けている武内を自分はそういう目で見てはいけないと思い込む正義感みたいなのもあるんでしょうね。
それに、義母の介護で疲れている自分を認めてくれるのは武内だけだったということ。
これには勲にも責任がありますね。
梶間家の男たち、勲と息子の俊郎の自分本位&ことなかれ主義な態度には不快感を覚えます。
自分の親の介護を全て女手に任せる勲。「お公家根性」にしがみついて何とか自分のプライドを保とうとする。
俊郎にいたっては、いつまでも自立できていない。こちらもプライドばかり高くて、家庭内での役割を果たせていない。子育てにしてもいいとこどり、楽なことしかしない。
物語の本題とは関係なく、最初はそんなことばかりに憤慨してました。
そんな中、孤軍奮闘する雪見は強いです。まどかを守ろうというその使命を担った母親の強さ哉。
彼女も子育てに悩んだりするのですが、それでもちゃんとまどかを抱きしめ、自分が受けた辛さをこの子にはさせないと必死です。この子が幸せになるには家族も幸せになること。だからひとり闘うのですね。
最後の修羅場でもわかるように、勲よりも早く行動に出たのは雪見です。この場においても勲は「何をフリーズしてるのか!」ですよ。
ラストの展開は意外でした。
ことなかれ主義だった彼がとった行動。もしかしたら人間誰しもそうなる可能性はあるのかも。
こっち側に座る人と向かいに座る人…。
それでも以前よりは家族の結束が固くなったのは事実でしょうね。
ところで、裁判官といえども「決定的な責任は負いたくない」が本音なのかもと思ってしまいました。
裁判って、よく分からないですが、正義&真実の判決を下すのではなく、検察側弁護側の言い分を審議する。あくまでも推定だし、過去の事例の統計から判断したりするのですよね。
真実は当事者しか分からない。
そう考えると、来るべき陪審員制度もかかわりたくないのが本音ですよね。(言っちゃいけなかったかな~)
退官後、大学の教員となった勲は、郊外の家で、妻と自分の母親、息子夫婦と同居していた。
ある日、隣りの家に、偶然にもあの裁判の被告・武内が引っ越してきた。
妻に親切にしたり、勲の母親の介護を手伝ったり、なにかと梶間家と関わりを持ち始めた武内に、ひとり息子嫁の雪見だけが不審感をもつ。
老親の介護で大変ながらもうまくまわっていた梶間家だが、武内が隣りに来てから家族の中に不穏な空気が流れ始める…。
映画「隣人は静かに笑う」をチラッと思い出しました。
恐いですね。
武内は見るからに気味悪く怪しいのですが、勲の妻・尋恵は親切な武内にどんどん気を許していきます。夫が判決を下した事件で無罪となったわけですから、夫を信じるし、そういう過去のため偏見を受けている武内を自分はそういう目で見てはいけないと思い込む正義感みたいなのもあるんでしょうね。
それに、義母の介護で疲れている自分を認めてくれるのは武内だけだったということ。
これには勲にも責任がありますね。
梶間家の男たち、勲と息子の俊郎の自分本位&ことなかれ主義な態度には不快感を覚えます。
自分の親の介護を全て女手に任せる勲。「お公家根性」にしがみついて何とか自分のプライドを保とうとする。
俊郎にいたっては、いつまでも自立できていない。こちらもプライドばかり高くて、家庭内での役割を果たせていない。子育てにしてもいいとこどり、楽なことしかしない。
物語の本題とは関係なく、最初はそんなことばかりに憤慨してました。
そんな中、孤軍奮闘する雪見は強いです。まどかを守ろうというその使命を担った母親の強さ哉。
彼女も子育てに悩んだりするのですが、それでもちゃんとまどかを抱きしめ、自分が受けた辛さをこの子にはさせないと必死です。この子が幸せになるには家族も幸せになること。だからひとり闘うのですね。
最後の修羅場でもわかるように、勲よりも早く行動に出たのは雪見です。この場においても勲は「何をフリーズしてるのか!」ですよ。
ラストの展開は意外でした。
ことなかれ主義だった彼がとった行動。もしかしたら人間誰しもそうなる可能性はあるのかも。
こっち側に座る人と向かいに座る人…。
それでも以前よりは家族の結束が固くなったのは事実でしょうね。
ところで、裁判官といえども「決定的な責任は負いたくない」が本音なのかもと思ってしまいました。
裁判って、よく分からないですが、正義&真実の判決を下すのではなく、検察側弁護側の言い分を審議する。あくまでも推定だし、過去の事例の統計から判断したりするのですよね。
真実は当事者しか分からない。
そう考えると、来るべき陪審員制度もかかわりたくないのが本音ですよね。(言っちゃいけなかったかな~)
by mam-san
| 2008-08-15 08:03
| (さ行の作家・他)