2010年 06月 13日
「桐島、部活やめるってよ」朝井リョウ(集英社)
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なんとも今ふうのタイトルで、まずはこのタイトルに目がいってしまいます。
お話は、とある田舎の高校が舞台。
タイトルにある桐島くんはバレー部の部長さんなんですが、突然部活をやめるという噂が流れます。
その彼が部活をやめるという「事件」が、同級生5人の日常にほんの少しだけど影響を与えます。
クラスの中でも「カッコイイ上のグループ」組の男子や女子、そして彼らとは真逆の「下のグループ」の男子ら。
みんな何らかの部活に入ってます(幽霊部員もいるけど)が、自分の中で部活が占める位置はそれぞれです。
でもみんなしっかり今どきの青春をしてるんです。
人を妬んだり、人の価値を認めなかったり、認めてもそれを言い出すことが照れくさかったり…。
大人だってそうだと思うけど、あの頃って、学校の中での自分の居場所がはっきりしていて、それが真の姿の場合もあるけど、演じている部分もあって、自分の中で懸命にバランスを取っています。
その危うささえもさら~っと風が吹き抜けるように描いています。
そこがいいんですね、この小説。
まだどんな方向にも修正がきく高校生の真っ直ぐな感覚を、そのまま文字に表しているところとか…
たとえば、部活時間の、校庭から見上げた空の色なんかの表現で、
…この街に生きるすべての人の、今日一日に起きた楽しかったこと、辛かったこと、幸せだったこと、悲しかったこと、何もかも全部を吸い込んだらきっとこういう色になるんだろう...
とか。
なるほど~、絵の具でもいろんな色を混ぜると、微妙で素敵な色が偶然生まれることあるよね。
そんな感じのあの暮れそうで暮れない空の色なんだね~
それに、同級生を見る目。可愛いとかかっこいいとか、そういうのを表すときに「す」を使っています。
「す、とした二重まぶた…」
「シュっとした」と同じような感じかな~
なんとなく分かるよね~
ほかの生徒たちがいっぱいいる中で、ぱっとその子だけに爽やか~な風が吹くような~
こういう表現が散りばめられていて、それを感じるだけで、なんだか10くらい若返る気がします(爆)
ちなみに、大学生の息子に「ほれ、読んでみ」と渡したら1日で読了したみたい。
著者も現役大学生(現在も?)だそうです。
あ、そうそう、このタイトルになっている桐島くんは登場しません。なのにこの存在感。
「田村はまだか」みたいね。
by mam-san
| 2010-06-13 10:49
| (あ行の作家・他)