2007年 07月 02日
「誰よりも美しい妻」井上荒野(マガジンハウス)
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ヴァイオリニストの惣介は、「誰よりも美しい妻」園子と、12歳の息子深との3人暮らし。
妻にぞっこんの惣介だが、浮気は日常茶飯事のこと(!)。
園子も夫の浮気を知っていながら黙って見ている。むしろ園子自身も惣介を誰よりも愛していている。
そんな両親の距離を間近で感じながら育った深も、初めての恋をする。
園子と惣介、惣介の愛人、そして思春期に差しかかりつつある深の、一風変わった(…と思える)愛の物語。
『誰よりも美しい妻』というタイトルと、トゥシューズを履いて踊るバレリーナの足をアップで写した装丁にドキドキする。(図書館で貸出カウンターに持っていくのがやや恥かしい…)
この園子さんは、ちょっとアンニュイな、昔、ドラマか映画で阿木曜子さんが演じていたようなセクシーなんだけどどこか中性的な魅力の、雲の上をフワフワ歩いているような女性をイメージする。
あと1週間で地球が滅亡すると告げられたのと同じ反応で、夫の浮気を知っても「あら、そう」と言いそうな女性。
『森の中のママ』のママの雰囲気にも似ている。
そんな彼女は息子から「怠惰だ」と言われたりするが、周りで起こる嫌なことを見て見ぬふりをしている怠惰さではなく、むしろ順応性がある怠惰さなのかなあとも思う。周りに踊らされてパニックになるよりはその波に乗ってしまえば楽だから、あえて楽な方向に自分のコントロールしている。
だから次々浮気を繰り返す惣介は「バカ男」に見える。
わざわざ浮気をして、本気になりかけもするが、そうすることで園子への愛を確信しているような、ちょっと曲がっている男。早い話が子どもである。芸術家だから、そういう精神面は成長できないのかな?全ての芸術家が幼稚ってことでもないが…。
そして深である。
こんな両親を見て育ったせいか、小学6年生というのに妙に子どもらしさがない。
この年でヴァイオリンの天才ということもあるが、とにかく小学生に見えない。
深のガールフレンドになるみくにしてもそう。まるで高校生に思える。今どきの小学生ってこんなに大人なの?
ちょっとそれが不自然だった。
さて、読み始めは本の外見から、不倫騒動があって結構シリアスな展開になるかと思いきや、園子さんの性格からなのか、淡々としていて、結局騒動も起こらず仕舞い。
あとがきで作者は「誰よりも美しい妻には、誰でもなれる。というより、なってしまう危険がある」と書いている。
「誰よりも美しい」というのは、そんな波風たてない、異物は排除する、、、白鳥みたいに水面下では必死な姿が、ここでいう「美しい」ことなのかなあと思ったりする。
園子は必死にもがいてるふうには見えないんだが。
無意識のうちにもその「美しさ」を保っている園子はこれで幸せなのか、それとも不幸なのか…ってことでしょうね。
妻にぞっこんの惣介だが、浮気は日常茶飯事のこと(!)。
園子も夫の浮気を知っていながら黙って見ている。むしろ園子自身も惣介を誰よりも愛していている。
そんな両親の距離を間近で感じながら育った深も、初めての恋をする。
園子と惣介、惣介の愛人、そして思春期に差しかかりつつある深の、一風変わった(…と思える)愛の物語。
『誰よりも美しい妻』というタイトルと、トゥシューズを履いて踊るバレリーナの足をアップで写した装丁にドキドキする。(図書館で貸出カウンターに持っていくのがやや恥かしい…)
この園子さんは、ちょっとアンニュイな、昔、ドラマか映画で阿木曜子さんが演じていたようなセクシーなんだけどどこか中性的な魅力の、雲の上をフワフワ歩いているような女性をイメージする。
あと1週間で地球が滅亡すると告げられたのと同じ反応で、夫の浮気を知っても「あら、そう」と言いそうな女性。
『森の中のママ』のママの雰囲気にも似ている。
そんな彼女は息子から「怠惰だ」と言われたりするが、周りで起こる嫌なことを見て見ぬふりをしている怠惰さではなく、むしろ順応性がある怠惰さなのかなあとも思う。周りに踊らされてパニックになるよりはその波に乗ってしまえば楽だから、あえて楽な方向に自分のコントロールしている。
だから次々浮気を繰り返す惣介は「バカ男」に見える。
わざわざ浮気をして、本気になりかけもするが、そうすることで園子への愛を確信しているような、ちょっと曲がっている男。早い話が子どもである。芸術家だから、そういう精神面は成長できないのかな?全ての芸術家が幼稚ってことでもないが…。
そして深である。
こんな両親を見て育ったせいか、小学6年生というのに妙に子どもらしさがない。
この年でヴァイオリンの天才ということもあるが、とにかく小学生に見えない。
深のガールフレンドになるみくにしてもそう。まるで高校生に思える。今どきの小学生ってこんなに大人なの?
ちょっとそれが不自然だった。
さて、読み始めは本の外見から、不倫騒動があって結構シリアスな展開になるかと思いきや、園子さんの性格からなのか、淡々としていて、結局騒動も起こらず仕舞い。
あとがきで作者は「誰よりも美しい妻には、誰でもなれる。というより、なってしまう危険がある」と書いている。
「誰よりも美しい」というのは、そんな波風たてない、異物は排除する、、、白鳥みたいに水面下では必死な姿が、ここでいう「美しい」ことなのかなあと思ったりする。
園子は必死にもがいてるふうには見えないんだが。
無意識のうちにもその「美しさ」を保っている園子はこれで幸せなのか、それとも不幸なのか…ってことでしょうね。
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by mam-san
| 2007-07-02 16:17
| (あ行の作家・他)