2008年 02月 02日
「カレンダーボーイ」小路幸也(ポプラ社)
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朝目覚めたら、いきなり小学5年生の自分になっていた。
48歳の三都と安斎は小学校時代の同級生。縁あって今は同じ大学の教授と事務局長。
その二人が同時にタイムスリップを体験する。
寝て起きると1968年、48歳の記憶と精神のまま体は小学5年生。そしてまた寝て起きると元の2006年の世界。二人は毎日それを繰り返す。
そのうち、過去と現在のつながりに確信を持った彼らは、ある計画を企てる。
それは、三都と仲良しだったクラスメイト里美ちゃん一家が心中するのを防ぐということだった。
さらに安斎は、心中のきっかけを作ったあの三億円強奪事件のお金を利用し、大学の理事長の不祥事をもみ消し、家族や大学を守ろうとする。
よくあるタイムスリップ物ですが、とにかく忙しいのは毎日過去と現在を行ったり来たりすることです。しかも、意識はそのままで。
だから、小学5年生なのに、ちょっと一服したくなったり、ヘンに野球がうまかったり。
そのうち、タイムスリップした者誰もが考える「過去を変えたら現在はどうなるか」に行き当たります。
自分たちにとっていいと思えるように修正していけば、現在はもっと幸せになっているはずです。
でも神様はそんなに甘くありません。
それが歴史の歪み。
人生って、その人が生きて死ぬまでに与えられている楽も苦も最初から決まっているんじゃないでしょうか。
だからどこかで楽をすればどこかで苦が待っている。
そういうふうに、彼らにも修正の代償が訪れます。
それが結局は、歴史を変えてしまった者への罰かもしれません。
このお話は、彼らが「冒険」したことをタネ明かしのように詳しくは語っていません。
ただ、こうやったからこうなった、だけです。
冒険小説というよりヒューマン小説なんでしょう。
最後は、ちょっとネタバレっぽいかな・・・
安斎は現在でタイムスリップを終える。
三都は過去で終える。
安斎は家族との平和を継続させ、その代償にタイムスリップしていた時の三都を失った。
三都は代償として自分の家族を失った。
残りの人生、とはいっても三都の場合、あと何十年も「ひとり」で生きていかないとだめだ。
タイムスリップって、本当にややこしくて、一本の軸につなげることは難しい。
だから、タイムスリップを終えたあとの人生は2種類あるってことですよね。
でもそれぞれにとっては唯一無二のもの。
別の次元であいつは元気に生きているだろう・・・・ですよね。
でも、でも、最後に残った「事実」がその人にとって一番大事なものだとしたら、
安斎は家族との日々であり、三都には2006年の家族ではなく、小学5年生のあの時代ということになりますね。
そういえば、過去は三都の視点から、現在は安斎の視点でしたものね。
三都の現在の家族ってあんまり出てこなかったものね。
そっちの面でなんだか切ない。
人生の選択って・・・
48歳の三都と安斎は小学校時代の同級生。縁あって今は同じ大学の教授と事務局長。
その二人が同時にタイムスリップを体験する。
寝て起きると1968年、48歳の記憶と精神のまま体は小学5年生。そしてまた寝て起きると元の2006年の世界。二人は毎日それを繰り返す。
そのうち、過去と現在のつながりに確信を持った彼らは、ある計画を企てる。
それは、三都と仲良しだったクラスメイト里美ちゃん一家が心中するのを防ぐということだった。
さらに安斎は、心中のきっかけを作ったあの三億円強奪事件のお金を利用し、大学の理事長の不祥事をもみ消し、家族や大学を守ろうとする。
よくあるタイムスリップ物ですが、とにかく忙しいのは毎日過去と現在を行ったり来たりすることです。しかも、意識はそのままで。
だから、小学5年生なのに、ちょっと一服したくなったり、ヘンに野球がうまかったり。
そのうち、タイムスリップした者誰もが考える「過去を変えたら現在はどうなるか」に行き当たります。
自分たちにとっていいと思えるように修正していけば、現在はもっと幸せになっているはずです。
でも神様はそんなに甘くありません。
それが歴史の歪み。
人生って、その人が生きて死ぬまでに与えられている楽も苦も最初から決まっているんじゃないでしょうか。
だからどこかで楽をすればどこかで苦が待っている。
そういうふうに、彼らにも修正の代償が訪れます。
それが結局は、歴史を変えてしまった者への罰かもしれません。
このお話は、彼らが「冒険」したことをタネ明かしのように詳しくは語っていません。
ただ、こうやったからこうなった、だけです。
冒険小説というよりヒューマン小説なんでしょう。
最後は、ちょっとネタバレっぽいかな・・・
安斎は現在でタイムスリップを終える。
三都は過去で終える。
安斎は家族との平和を継続させ、その代償にタイムスリップしていた時の三都を失った。
三都は代償として自分の家族を失った。
残りの人生、とはいっても三都の場合、あと何十年も「ひとり」で生きていかないとだめだ。
タイムスリップって、本当にややこしくて、一本の軸につなげることは難しい。
だから、タイムスリップを終えたあとの人生は2種類あるってことですよね。
でもそれぞれにとっては唯一無二のもの。
別の次元であいつは元気に生きているだろう・・・・ですよね。
でも、でも、最後に残った「事実」がその人にとって一番大事なものだとしたら、
安斎は家族との日々であり、三都には2006年の家族ではなく、小学5年生のあの時代ということになりますね。
そういえば、過去は三都の視点から、現在は安斎の視点でしたものね。
三都の現在の家族ってあんまり出てこなかったものね。
そっちの面でなんだか切ない。
人生の選択って・・・
by mam-san
| 2008-02-02 16:43
| 小路幸也